眼球をとおして視覚を考える


眼とカメラ
眼球とカメラを比較してみる。

水晶体≒レンズ
水晶体は膨れたり扁平になってピントを合わせる。近くの物は膨れて、遠くの物は扁平。
レンズは前後に動かしてピントを合わせる。

瞳孔≒絞り
両者ともに孔の直径を光量によって調整する。
瞳孔は直径8〜2mm、カメラの絞りはf=1.4〜22などと目盛りがふられている(焦点距離mm÷絞りの直径mm)

網膜≒フィルム
網膜は球面状の眼底に張りついている。網膜は、超高感度である桿体(かんたい)と低感度である錐体(すいたい)の2種類の視細胞によってできている。つまり感度を自動的に調整できる。
フィルムは一定の感度に設定されている。用途に応じて感度を選び取る。

硝子体≒暗箱(レンズとフィルムの間の空間)
硝子体は透明でゼリー状である。つまり透明な物質で 眼球の内部の空間をつくっている。
暗箱はカメラのボディーによって内部の空間を維持している。余計な内面反射を防ぐために、レンズ通した光が通る空間の壁面は艶消しの黒になっている。


網膜中心重点主義
フィルムは像の当たる面に写真乳剤が均一に塗布されている。均一でないと受けとめた像を正確に再現できない。
網膜の場合は、像の再現を視力に置き換えられるが、その視力はたいへんに不均一である。瞳孔からそれぞれの網膜までの距離や桿体と錐体の分布は均一とはいえない。
眼球の光軸が網膜にあたる中心位置から、わずかに耳側にずれたところにくぼみがあり中心窩(ちゅうしんか)と呼ばれる。この中心窩は、小さい物を見る性質が非常に優れている(優れているのは中心窩のみ)。
視力とは、二つのものを空間的に分離して見ることのできる最小の間隔のことであり、その間隔を目から望む角度(分)で表し、かつそれの逆数で定義している。(視力1.0とは、見分うる最小の間隔が角度で1分、2.0なら1分の半分で30秒である) 視力とは、中心窩のみのことであり、そこから少しでもはずれると、視力は急激に低下する。


中心窩の構造
中心窩のくぼみ
網膜は眼球内壁に張りついている厚さ1/4mm程度の膜で、神経細胞が過密に並んでいる。細胞の中には光を捕らえる視細胞があり、眼球に入ってきた光を最初に吸収する役割からも光に一番近い位置(網膜の表面)にあった方がよさそうに思える。しかし光を吸収する視細胞は網膜の一番奥に収まっている。つまり視細胞に到達して吸収されるためには、光は他の細胞を通過しなければならなく、これは結像光学的には好ましい状況ではない。それらの諸細胞は透明であるが存在物にはかわりがなく、偏光や散乱によって結像性は劣化する。つまり網膜像がぼけて視力も落ちてしまう。
ところが、網膜の中心部分だけはそのような欠点が取り除かれている。光の進路途中にある諸細胞が横方向に掻き分けられて、そこだけは視細胞に直接光が到達するように工夫されている。ここが中心窩である。

視細胞から大脳細胞へ